デジカメの画素サイズの話
出ました。α-900。最大の違いは、画素サイズです。
だから、画素サイズの話をしましょう。コンパクトカメラやビデオカメラでは画素の対角線を取って1/2.3インチとか表現します。テレビのサイズを対角線でインチサイズで表現するテレビを開発したアメリカの方式が生きています。一眼レフでは、フィルムカメラとの関係で、Cサイズとか35mm版フルサイズとか表現します。
実際に今のカメラの使われている撮像素子のサイズを調べてみました。コンパクトデジカメでは、1/1.7 、1/2.3 、1/2.5インチがあります。画素数は、1360万画素、1010画素、740万画素、で、物理的な大きさと画素数は直接関係しませんが、レンズの焦点距離には、関係します。インチでは、感覚的に判り難いので、計算するとコンパクトカメラでの対角線は、14.9mm 、11mm、10mmになります。一眼レフは、一番普及しているC版が28mm、フルサイズで43mm。面積は、二乗で効きますからコンパクトカメラに比べ一眼レフが如何に大きいかが理解出来ます。
レンズの焦点距離に関係すると言う事は、同じ大きさの写真を写すのに必要なレンズのサイズが異なると言う事です。35mmカメラ(α-900の場合)焦点距離35mmのレンズで写した時と同じ大きさにするには(使い捨てカメラやフィルム式コンパクトカメラで多い基本的なサイズ)、C版のデジカメ一眼レフでは、22mm、コンパクトデジカメでは、12mm、8.9mm、8.1mmになります。焦点距離が小さくなればレンズも小さく出来て、小型カメラでも同じく写るとなり、ここまでは、計算で簡単に分かる話です。問題は、同じく写ると言いながら、なぜ撮像素子の大きい方が良いのかです。
視点を変えて、全体の大きさではなく、一つの画素がどの位の大きさなのかをざっと計算して見ましょう。今度は、サイズが同じでも画素数が違えば、1画素のサイズが変わりますが、概略の感じで計算します。 α-900クラスは、0.0059mm。C版のα-700で0.0055mm 。ほとんど変わりません。サイズが大きくなっても、画素数も増えたので1画素の大きさはほとんど変わらないのです。しかし、プリントの段階で差が出ますが、それは後での話です。コンパクトデジカメでは、上の例をとると0.0037、0.0032、0.0034mmになります。コンパクトデジカメに対してデジカメ一眼レフの1画素は、1.5〜1.8倍の大きさがあります。面積では、2.3〜3.2倍位の違いになります。
今度は、レンズとの関係を考えます。高級レンズでは、解像度何本でコントラストがどの位と言うデータが公表されていますが、解像度の限界は書かれていません。デジカメ一眼レフの画素を有効に使う為には、およそ100本/mm程度が要求されると考えられます。画素サイズが小さいコンパクトカメラは、さらに要求度が高いと言う事だけは、簡単に判ります。ちなみにレンズのデータで書かれている解像度は、20本/mmとか40本/mmの時にコントラストがどうかと言うのが多く限界は判りません。別の見方から検証すると、以下の様になります。35mmフィルムカメラで撮影して普通のL版にプリントするとき約4倍の拡大をします。A-3版クラスで13倍程度です。出来上がったプリントは、人間が見るので其の時手に持って見るプリント上で要求される解像度は、10本/mmかせいぜい20本/mmです。これは、印刷物を考えると良く分かります。印刷では、150線/インチとか175線/インチで解像度を表現します。印刷物を拡大すると点々に見えます。しかし肉眼で見れば、きりりとはっきり見える事は、いつも経験している事です。これを計算すると12線/mmとか15線/mmの世界です。L版クラスならば20本の解像度で十分過ぎます。A-3版でも60本程度でも問題にならなかった世界です。しかも、肉眼で見るとすれば、大きいプリント程離れて見るのでプリント上の解像度の要求は低くなります。結論を考えると、コンパクトデジカメで大きいプリントを作る為のレンズは、デジカメ一眼レフ用のレンズよりも相当高い解像度が要求されるはずですが実現しているのか?されていなければ、大きく伸ばした時に差が出るのはやむを得ない事になります。出来上がりの画質は、画素数だけが問題ではないのです。コンパクトデジカメで大型プリントをしなければ、もっと画素数の少ない物を作れば良いのですが、買う方も作る方も何となく数字が大きければ高性能と思う民族性ですから、仕方がないでしょう。何しろ世界で1億台のデジカメが作られていますがそのほとんどを日本のメーカーが作っており、撮像素子に至っては、ほとんど2〜3社で独占している状況です。ICの世界では、少量多品種よりも、1種多数が一番効率的ですから。
プリントを考えます。小さいプリントは、ほとんど問題が無いのでコンパクトデジカメの話は横に置いて、C版のデジカメと35mmフルサイズのデジカメで考えます。(α-700とα-900)同じレンズで撮影して被写体を同じ大きさにプリントする場合、カメラと被写体までの距離が同じならば、α-900の方が広く写る。もし画面の一部だけを切り出して拡大プリントするならば、条件は変わりません。しかし、画面左右の範囲を同じ様に写すのであれば、α-700は、約1.4倍離れなければなりません。これで1コマの画面に写る範囲が同じくなります。同じ写真でも900は、2400万画素、700は、1200万画素ですがここで問題は、画素数ではなく、素子の大きさになります。700は、少し離れて写しますから、素子上に1/1.4の大きさに被写体が投影されます。それだけ解像度の高さが要求される事になります。同じレンズでも900は、700で要求される解像度の1.4分の1で済みます。レンズは、解像度が低い範囲程、特性が良くなりますから900の方が、レンズ特性の良い範囲で撮影する事になります。これが素子が大きい方程良い理由です。これは、フィルムの時代、拡大率で考えていました。大判カメラならば、35mmカメラ場合の1/2とか1/4の拡大率で済みました。とりもなおさずプリント上でのレンズの解像度の違いになっていました。4切(25x35cm)のフィルムで撮影して密着でプリントを見るとレンズの解像度10〜20本で撮影された画像を見る事になります。勿論プリント上で50本とかも表現されているのですが、目に見えるのは10〜20本の範囲です。解像度50本の画像を拡大して10本程度にした画像とは、比較になりません。やっぱり画素のサイズは、大きい程良いと言う事になります。(画素数は、程々あれば良い)
プリントの解像度を考えるとき、『にじみ』があるかないかが問題になります。印刷物は175線/インチでもあれだけきれいに見えるので、プリント上では、300本/インチの解像度で問題がありません。しかしインクジェットプリンターの様に本質的ににじみの要素を持っている場合は、さらに解像度を上げてカバーしようとしています、其のため、600本/インチとか1200本/インチの解像度の物を作っています。これは、プリンターの最後の段階での問題です。プリンターに入力する画像解像度は、300本/インチで問題がありません。100本/インチまで低くする一寸判るかなと思いますが、150本/インチならば、大伸ばしで少し離れて見る分には判らないと思います。全て試してみれば良いのです。銀塩写真でデジカメをプリントをする時は、レーザープリンターです。レーザーの良さは、にじみが出ない事です。α900では、300本/インチに拡大すると52X34cmになります。700では、24x36cmになります。この位の大きさまでならば非常にきれいなプリントが出来ると言えます。フィルムに比べてデジカメの素子上の解像度が高くなっているので、レンズメーカーもどんどん新型レンズを作っています。ある雑誌でも、元高級の古いレンズよりは、安くても新しいレンズの方がきれいに写せると言う記事がありましたが、見かけでは判らない所でメーカーが努力した結果が製品になって供給されています。何よりも使って楽しみましょう。カメラの性能よりも、写したい気持ちがよい写真に繋がります。